Apitore blog

Apitoreを運営していた元起業家のブログ

富士ゼロックスを退職しました

はじめに

正確にはまだですが、10月31日をもって2009年から約9年間お世話になった富士ゼロックスを退職します。11月からは別の会社でお世話になりますので、起業による退職ではありません。Apitoreの起業を期待してくださった方、もうしばらくお待ち下さい。10月はOneJAPANハッカソン関係でCEATECに出展しつつ、引っ越しつつ、家族との団欒を楽しみつつ、Apitore関係をがっつりやりつつ、のんびりします。今回のエントリーは、富士ゼロックス時代の振り返りをしようと思います。転職先の話はしませんのでご了承ください。ウィッシュリストも公開しているので、誰かなんかちょーだい!

これまで(富士ゼロックス社員として)

自然言語処理研究者(2009年~2014年)

2009年4月に富士ゼロックスに新卒で入社し、2014年12月までは自然言語処理の研究チームに居ました。在籍時は実にたくさんのプロジェクトを担当させて頂いたのですが、特に印象に残っているのは医療系テキスト解析とSNSテキスト解析です。医療系テキスト解析では東大病院との共同研究プロジェクトでした。SNSテキスト解析はプライベートでもやっていて、元々ボット作ったりして遊んでました。会社がSNSテキスト解析やるぞとなったときに、既にやっていたこともあってプロジェクトに参加しました。Twitterに関してはかなり詳しくなりまして、Twitter APIの仕様からツイートデータの特徴まで、広く深く把握しています。担当した研究テーマは基礎(形態素解析)から応用(極性判定等)までで、色々とSNS関係で技術を弄くりました。FXPAL (富士ゼロックスのパロアルト地区の研究拠点) にも1ヶ月ほど出張させてもらい、現地で英語の自然言語処理技術の研究開発を担当したり、FXとFXPALの協業の調整も担当しました。パロアルトには学生時代にもインターンシップで6週間ほど行っていました。いつかパロアルトで働きたいです。

画像圧縮研究者(2014年~2015年)

2014年12月から、画像圧縮の研究チームに異動しました。担当は、富士ゼロックスのメインプロダクトであるコピー機向けの画像圧縮アルゴリズムの研究開発で、大型機を担当しました。実はソフトウェア系の事業寄りの部門に異動したいと希望を出していたのですが、(何があったのか)コピー機の内側のソフトウェアを担当することになりました笑。コピー機にはハード的な制限が多々あるので、そのなかでアルゴリズムを適切に組み上げていく作業はとても刺激的な経験でした。上司が優秀なこともあって3ヶ月ほどで結果を出せたので、その後の9ヶ月は保守みたいな感じでした。余談ですが、FXにはコピー機に特化した技術がたくさんあり、いくつか知る機会があったのですが、他社には簡単には真似できないと思いました。とても高い技術力です。

新規事業開発リーダー(2015年~2017年)

2015年12月あたりで画像圧縮関連の研究が落ち着いてきたので、新しいことを始めることにしました。ゼロから始める新規事業です。この頃にはプライベートでApitoreをスタートさせていたので、Apitoreとは全く関係ないことをやろうと思いました。そして1~2ヶ月くらい外回りをした結果、VR/AR/MRが次世代のコピー機(=オフィス必須機器)になると確信したので、この領域で新規事業探索を始めました。VR/AR/MRは私のコンピテンシーのミスマッチをしていますが、「会社に必要だと思うことを人任せにしてはいけない。やるなら言い出した俺しかいない」と思って自分でやりました。・・・こんな突拍子もないことに許可をくれた上司には本当に感謝しています。・・・ちなみに、FXにおけるVR/AR/MR活動は私が最初に始めたわけではありません。色んな部署で始まっていまして、私はそれらと連携しつつ自分の実現したい未来に歩みを進めつつ、って感じでした。 とは言え最初は、ノーマネー、ノーメンバー、ノーメンターという状況からスタートしました。手始めに、小さいアイデアだけで社内のビジコンで発表するところから始め、バーチャルハリウッドプラットフォームなど活用できる機会はすべて活用しました。声をかけられるヒトには声をかけて、他の企業や大学も巻き込めるだけ巻き込んで、「コンプライアンスは守るけどルールは守らない」をスローガンに色々と行動しました。行動すると波紋が拡がり、新しい行動の機会が舞い込んでくる。ルールを守らないので、上司には迷惑かけっぱなしでしたね。ありがたいことに上司は私を全面的に応援してくれまして、活動を自由にやらせていただけました。さらに社長賞にも推薦してくれまして、「ベストチャレンジ賞」という賞もいただきました。 色々な活動の中でも、京都工芸繊維大学の木谷研究室の学生との共同プロジェクトは特に楽しかったです。FujiXerox公式Facebookページでも公開になりました。そのときの私のポストがこちら。 作品1: Audirun

作品2: Glance

作品3: LOOK UP

その後も事業創出に向けてゴリゴリ活動してきて、良い感じになっていましたが公になっていないことなので割愛します。

これまで(Apitoreの創業者として)

このブログを見ている方はすでにご存知でしょうが、私はプライベートでApitoreというアルゴリズムのマーケットプレイスを提供しています。2015年10月末にあったStartup Weekend Tokyo Techに出場し準優勝したことをきっかけに日本を改革することを目指して始めたものです。ミッションは「世の中のあらゆるアルゴリズムを誰でも簡単に利用できる世の中にする」「全ての研究者/技術者に目的・力・夢を与え、世の中の課題とのマッチングを加速させる」というものです。 日本の大企業にはたくさんの死蔵技術があり、多くの技術者と研究者の時間が無駄になっています。私はこの現状をを変えたいと思い、Apitoreを立ち上げました。そして、現状を打開するためには「技術をオープンにすること」「技術を課題と結びつけること」「技術をWebAPIで提供すること」が必要だと考えました。 課題の確認および解決策の妥当性の確認(Product-Market-Fit)のため、これまでに約500人にインタビューをしました。その結果、課題は確認でき解決策も妥当であるという感触を得ることができました。しかし、Apitoreを利用する大企業はおらず、協業には多くの課題があることを確認しました。大きな課題は3点です。1. WebAPIそのものの認知度が低い、2. 大企業は技術を公開することを極端に恐れる、3. Apitoreそのものが魅力的ではない。

1. WebAPIそのものの認知度が低い

WebAPIの認知度改善について。WebAPI関係のハンズオンを開きました。WebAPIの使い方や作り方を教える勉強会です。Connpassで募集し、スペイシーなどで会議室をレンタルし、有休を使って勉強会を主催しました。第1回は27名が登録して出席は3名という結果で、とてもキャンセル率が高かったです。しかしそのときに来てくれた方が共感と応援をしてくれて、以降のハンズオンのリピーターになってくれました。また、ハンズオンの場所を無料で貸してくれる方も現れ、色々な方に支えられて少しずつコミュニティを増やしています。

2. 大企業は技術を公開することを極端に恐れる

技術を公開することについて。そもそも大企業は技術を公開すること自体にものすごくネガティブでした。この現状を変えるために、まずは技術を公開する流れを日本に作ることにしました。それがハッカソン企画です。はじめは一人ひとりに声を書けて回っていたのですが、見向きもされませんでした。 ある時に知り合った方からOneJAPANの存在を知りました。しかもたまたまOneJAPAN発起人の一人が富士ゼロックス従業員だったこともあり、すぐに彼に頼んでOneJAPANの集会でハッカソンの企画提案ピッチをさせてもらいました。そのときの資料がこちらです。ここで一気に70人の賛同者を集めてFacebookグループを作ったものの、色々とうまくいかず、すぐに活動は下火になりました。ほぼ一人で情報展開やワークショップ、ハンズオンをやっている状況でした。 ある日、富士通のヒトから連絡があり、会うことになりました。彼らはハッカソンに対してポジティブで、既に富士通社内で何度もハッカソンを実行していました。そして、彼らが代表となることでOneJAPANハッカソンが実現しました。私には実現できなかったことなので、彼らが実現してくれて大変に嬉しかったです。 ハッカソンが富士通主催で開催できるとなり、私はこのタイミングで富士ゼロックスを全社的に巻き込むことにしました。これまでの縁をフル活用したら社長へ直談判することができ、その後に技術系役員全員に企画説明し、各所の支援を得ることができました。そうして、富士ゼロックスでは業務として本ハッカソンに参加することを了承いただきました。おかげで、富士ゼロックスからOneJAPANハッカソンへの応募者はダントツ1位でした。 ハッカソン当日は約100名40社が参加しました。富士通の力の入れようは半端なく、最高のハッカソンでした。参加者満足度も極めて高く、ネットプロモータースコアは中央値で9.0を達成しました。詳しい内容は守秘義務があるので書けませんが、本当に最高のハッカソンでした。富士通の力の入れようは凄まじい。 振り返ると、OneJAPANハッカソンの企画提案から実現までに8ヶ月かかりました。この活動は今後も2回3回と続けていきます。近い将来、我々は「大企業が技術を隠すことなく、技術を活用するためにオープンにする」という流れを作れると思います。

3. Apitoreそのものが魅力的ではない

Apitore自身の魅力を高めることについて。このKPIはApitoreのユーザーを増やすことだと私は考えました。そしてユーザーを増やすためには、ユーザーが欲しい商品(アルゴリズム)を提供する必要があります。 そこで私はApitoreのユーザーにアンケートを取り、またユーザーに直接会いました。そして彼らが欲しいというアルゴリズムを作り、提供しました。無料で開発を受託するような行為ですが、大規模な開発ではなく小規模な開発にとどめています。そして、このプロセスは私にとっては必要なプロセスでした。それは「世の中にはどのような課題があり、どうすれば解決できるか」を知るためです。 この一連のヒアリングと開発のサイクルによって、多くの学びがありました。そして、このサイクルを多く回すことが、Apitoreを次に進めるために必要なプロセスだと理解しました。そのために、今回転職することにしました。「技術と課題のマッチングを担当する」職が、私に必要な次のキャリアです。 ちなみにですが、Apitoreは現在約230名のユーザーがいまして、先日ありがたいことに課金ユーザーが現れました!今後も少しずつ拡張していきたいと思います。・・・ちなみに、現在は年間50万円近くの赤字状態なので、寄付等頂けるとありがたいです。

これから

次の職場では「アルゴリズムの改善」「クライアントとのやり取り」「クライアントと一緒にサービスを作る」など、顧客接点を持ちながらソフトウェアエンジニアとして働く予定です。研究技術開発も担当だと思いますが、まだ詳細は分かっていないので、また別の機会にご紹介できればと思います。私は新しいキャリアを通して技術と課題のマッチングをたくさん経験し、市場に価値を届けまくって、ビジネスサイドへの理解を深めます。 これまでの経験から、私は次の職場でも活躍できる自信があります。そして、私のApitoreで実現したいビジョンは次の職場のミッションと親和性が高いと思っています。私のビジョンの実現に向けて、一歩ずつキャリアを繋げていきたいです。 これからも応援頂ければ幸甚です。

ウィッシュリスト

退職エントリにつきものということで、、、ちょーだい! http://amzn.asia/9oR86Bc